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ポートアイランド

   

野鳥の中には街中や山林などの緑地では生息できず、砂礫地や砂浜、干潟といった草木のない環境を好むものもいます。例えばシギやチドリ類、あるいはアジサシ類といった水鳥の仲間たちです。日本野鳥の会愛知県支部は、名古屋港にあるポートアイランドをそのような水鳥を主をする野鳥の保護区として保全することを国、愛知県、名古屋市および周辺の全ての自治体に対して提案します。激減したシギやチドリ類のねぐら利用や国際的希少種であるコアジサシの繁殖地としてポートアイランドの利用を促進し、生物多様性保全のモデルとすることで環境学習の場としての利用も提案します。

名古屋港の人工島「ポートアイランド」は、名古屋港の水底を浚渫した際の土砂を積み上げて出来た面積約257haの人工島です。名古屋港の入り口に位置しています。現在のところ、まだどこの自治体にも属していません。国土交通省が管理をしています。



上陸禁止となっており、国土交通省の船に同乗してポートアイランドを「見学」という形でないと上陸できません。

国土交通省の船


名古屋商工会議所や中部経済連合会などの中部経済界は産業利用するためにさまざまな提言をしています。

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しかしこの人工島は港の土砂を積み上げて出来たものであり、その基盤は非常に脆弱です。またポートアイランドを産業利用するためにはアクセスする手段として橋または海底トンネルで結ばなくてはならず、これには数千億円という巨額の費用がかかります。

一方、愛知県は2010年の生物多様性条約会議 COP10で採択された愛知目標の達成のための行動計画「あいち生物多様性戦略2020」を策定しています。この中で「あいちミティゲーション」という愛知県独自の取り組みを挙げています。(“ミティゲーション“とは開発の際に自然への影響を回避したり緩和したりすることです。)あいちミティゲーションでは、ミティゲーション後に残る影響を生態系ネットワーク形成に役立つ場所や内容で補うことで開発される地区および近辺の自然を保全します。

古来、名古屋港一体には広大な干潟が広がり、野鳥を頂点とする豊かな生態系が存在していました。江戸時代初期から干拓による農地化が進み、明治~昭和に入ると工業化が進み、さらに平成に入って開発が進んで現在のような形になっています。人の手が入る以前は野鳥を頂点とする自然の楽園であったことでしょう。今やその頃の海岸線の自然は全て失われ、わずかに残る藤前干潟にその姿をかろうじてとどめています。

名古屋港の破壊されつくした自然環境は希少な野鳥の生息にも重大な影響を与えています。激減したシギ、チドリ類。種の保存法で国際的に希少な動植物種に指定されているコアジサシ。いずれもこのまま放置すればいずれ愛知県では姿を見ることが出来なくなる可能性があります。

そんな状況において、名古屋港の入り口にあるポートアイランドは、野鳥にとっての絶好のロケーションとなっています。



人が立ち入ることができないため、人による攪乱がないこと、周辺を海に囲まれており藤前干潟に近いことから餌場には困らないこと等の理由によりシギ・チドリ類のねぐら利用やコアジサシの繁殖、また木曽岬干拓地を利用するチュウヒなど希少な猛禽類のエサ場として絶好の場所となる可能性があります。

そこで日本野鳥の会愛知県支部は、「あいち生物多様性戦略2020」の基本精神にのっとり、ポートアイランドを水鳥を主とする野鳥の保護区として保全し、あいちミティゲーション実行のモデルとすることを国、愛知県、名古屋市および周辺の全ての自治体に対して提案します。ポートアイランドを生物多様性保全に利用するということは、開発による影響を生態系ネットワーク形成に役立つ場所や内容で補う、というあいちミティゲーションをまさに実行するということに他なりません。これほどの面積を持つ人工島を丸ごと保護区として保全出来れば愛知県は世界に誇る前例を作ることになるでしょう。

            

ポートアイランドに関する最近の記事(時系列に並んでいて、上の方が新しい記事となっています。)

     

名古屋商工会議所が2016年度、非公開で開いた会合ではPI開発を巡り様々な意見が交わされた。「物流機能の強化へ港湾施設にすべきだ」「名古屋の魅力を高めるリゾート施設に」。名古屋商工会議所は提言をまとめるため、今夏にも港湾関連の会員企業や有識者による検討会を立ち上げる。検討会の事務局役となる名商企画振興部の大竹正芳地域・都市整備グループ長は「20年、30年先を見据えて企業活動や名古屋港にとってプラスになることを提言したい」と語る。山本亜土会頭も3月の記者会見で「これだけの土地が遊んでいる。活用が大きな問題だ」と述べた。
(日本経済新聞 2017/5/25)

名古屋港管理組合は、ポートアイランドの活用策を探るため、道路や鉄道による対岸部とのアクセス調査結果をまとめた今後のルート選定のたたき台を発表した。橋りょうの場合、延長約3400~7300メートル、事業費約1000~1800億円、トンネルでは、延長約2200~8300メートル、事業費約1300~3700億円と見積もった。今後、関係機関と協議し、土地利用の具体策を探る。
(日刊建設工業新聞 2017/4/30)

      

財団法人中部経済連合会は「中部圏交通ネットワークビジョン」と題した政策提言をまとめ、ポートアイランドを自動車輸出基地として活用することを求めている。提言書は関係省庁、自治体に配り、今後のたたき台にする考えである。この中で、ポートアイランドにモータープールを作る、弥富市からポートアイランドを経由して岡崎市付近までを結ぶ「名古屋三河道路」の全線開通も要望している。
(中日新聞 2016/4/27)

  

名古屋商工会議所は、2015年10月、ポートアイランドをどう活用するか積極的な議論を始めるための官民の会議を5年以内に設立するよう、愛知県、名古屋市に要望、その上でリニア中央新幹線が開業する2027年ごろ、一部利用を始めたいとの展望を示した。
(中日新聞 2015/10/29 )


 
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